留学を決意した経緯や動機、当時の心境は?
私は幼少から「アフリカに渡航する」という漠然とした夢を持っていました。この夢はサッカーという個人的な趣味に由来していて、得点後に選手が輪になって踊り合うような陽気なアフリカ文化を肌で感じてみたいとぼんやりと考えていました。一方でアフリカは日本から地理的・心理的な距離を持ち、実際に渡航を実現する事は簡単ではありませんでした。特に、関心のあったサブサハラアフリカでは情勢が安定しない国も多く、この事も渡航の決心を難しくさせる要因でした。
そんな中で知ったのが実践型プログラムの存在でした。大学主催のプログラムであり、引率してくれる教授・スタッフの方がいるということで、アフリカへの第一歩を踏み出すのに最高の機会だと感じました。また、渡航先がガーナであったという点も決断を後押ししてくれました。不安定要素の少なくない西アフリカ地域の中で、「優等生」とも呼ばれるガーナは治安が非常に良好です。更に英領地であったため公用語が英語で、言語の壁もありませんでした。
そして、この渡航を学部での4年間の学びの中で大きな転機にしようとも考えていました。私が所属する国際教養学部では、リベラルアーツ教育が主であり、2年生の途中に自ら選択するまで学問的専攻がありません。専攻に悩む私は、今回の文化・歴史・経済・政治と様々な視野からアフリカ・ガーナを捉えるプログラムに参加することで、自分の本来の学問的興味に出会うことを目的としました。
現地での経験、学び、活動内容は?
- ガーナ大学の教授によるガーナの政治・歴史・経済・言語についての特別講義
- ガーナ大学の方々と共に現地のダンスや太鼓を実際に体験
- クワメ・ンクルマ記念公園にてガーナの独立期について学習
- 在ガーナJICA事務所を訪問し、日本のガーナ支援の達成と課題について学んだ
- 大西洋奴隷貿易の拠点となった3つの奴隷城に訪れ、奴隷が置かれた過酷な環境を肌で感じた
- ガーナに派遣されている青年海外協力隊の方々とのディスカッション
印象に残った出来事は?
特に印象に残っているのはガーナの現代政治についてのレクチャーです。講義では、ガーナが独立後の混乱期を乗り越え、いかに「優等生」と呼ばれるまでに至ったのかに焦点が置かれました。ガーナが優等生たる所以は平和的な民主主義にあります。不安定であった1980年代を乗り越えた後、ガーナは30年以上民主主義を維持しており、選挙を通した政権交代が穏便に行われる政治的安定は西アフリカ地域で屈指のものです。講義の中で特に印象的だったのは、教授が、この安定を隣接する西アフリカ諸国に伝播させなくてはならないと強調していたことでした。ガーナは自国内の情勢に満足せず、紛争や貧困にあえぐ近隣地域をリードしていく立場にならなくてはいけないということでした。例えば日本が属するアジア等に比べて、ガーナの人々は「アフリカ」の人間としてのアイデンティティを持っており、それがこの連帯への高いモチベーションの根底にあると思います。この独特な国家を超えた連帯意識は強く印象に残りました。

留学を経て成長したなと実感していることや、身につけたスキルや知識は?
今回のプログラムは私を偏狭な世界観から解放してくれました。今日、先進国はアフリカの将来性に大きな期待感を持っています。世界中が熱視線を向け、大陸はしばしば「ラスト・フロンティア」と称されます。例に漏れず、私もアフリカの輝かしい将来性や希望を渡航の中で目にすることを期待していました。緑に囲まれ伝統的な暮らしをするという「ステレオタイプなアフリカ」が、いかに現実と乖離しているかを確認するつもりでした。しかしながら、実際の渡航を経て私はいかにこれらが甘く、狭い考えであったかを認識させられました。アフリカ諸国に訪れた多くの日本人はその発展具合に驚きますが、むしろそれを期待して訪れた私にとっては街に残された発展の余地が非常に印象的でした。ポイ捨てや渋滞問題等、少し見渡すだけで数々の重大な課題が見られました。加えて印象的だったのは、ガーナ経済についての講義です。講義では現代のガーナ経済が抱える根本的な問題が次々に紹介され、「ラスト・フロンティア」からは程遠い現状を学びました。こうした決して楽観視できないアフリカの現状に対する捉え方は、ガーナに行き、ガーナを見て、ガーナの人の話を聞き、彼らの世界観を共有したからこそ得られたものでした。渡航前の自分の視野は偏狭的な「日本から見た」アフリカに過ぎなかったということを痛感させられました。プログラムを通して、自分の世界観についてメタ認知し、物事を深く捉えるためにはそこから脱却し、他者の目線に立つことがいかに大切かという事を認識することができました。

留学経験を将来、どのように活かしていきたいか?
私はプログラムを通して「アフリカ連帯の未来はどうあるか」というリサーチクエスチョンを設定しました。印象に残った「西アフリカをリードするガーナ」というガーナが描く未来がいかに反映され、一体何を目標にその未来へ向かうのか、という点です。ガーナを独立に導いたンクルマはパン=アフリカ主義を掲げ、アフリカの連帯を強調する人物でした。その影響を色濃く受ける現代ガーナですが、これに対して50以上あるアフリカ諸国はどのようにリアクションするのでしょうか。広大なアフリカ大陸にはマグレブ地域から南アフリカまで地理的・歴史的・政治的に多様な国々が存在します。また、仮にこれらの国が連帯に向かっていった際、その達成の先にあるものは何なのでしょうか。ガーナでの9日間は、混乱期を抜けつつあるアフリカの今を「連帯」という視点を通して研究していきたいという学問的関心を強く刺激してくれました。プログラムを通し、大学での残りの3年半や大学院での学びの軸を見つけ出すという渡航前の目標を達成することができました。
加えて、偏狭な世界観を認識したことで、更に他の世界観を共有したいという強く願うようになりました。今回ガーナに訪れたからこそ、「ガーナからみたアフリカ」を感じられたように、実際に足を運ぶことによってこれまで考えが及ばなかった視野を得ることができると強く思います。アフリカに限らず、これからも色々な国に足を運び、「見方」を広げていきたいと考えています。

留学を検討している学生へのメッセージをお願いします!
繰り返しにはなりますが、「実際に訪れなければわからない」という一見ありきたりに聞こえる言葉は、非常に芯を捉えていると思います。少しでも興味があったら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。上智大学は様々なニーズに応える留学機会を提供していますし、これまでぼんやりとしていた個人的な興味を学術的な探求へと昇華させる良い機会となるでしょう。更に、その体験は今後の学びの軸になると思います!















